【地理教育に大きな成果】NHK「ブラタモリ」定期放送終了を惜しむ

【追記】2024.3.9

NHK「ブラタモリ」は、2024年3月9日の放送をもってレギュラー放送を終了したことが番組公式サイトで明らかになりました。いままで本当にありがとうございました。

ブラタモリ
街歩きの達人・タモリさんが“ブラブラ”歩きながら知られざる街の歴史や人々の暮らしに迫る「ブラタモリ」。 話題の出来事や街に残された様々な痕跡に出会いながら、街の新たな魅力や歴史・文化などを再発見します。

最終回を特番にしたり特別なメッセージを残さなかったのは、「タモリ倶楽部」同様にタモリさんの意向だと思われます。タモリさんが好きな地質ネタを何気ない地域で追いかけるスタイルはこれまでの集大成を見ているようでした。これまでの放送に感謝するとともに、不定期放送にも期待を寄せたいと思います。

【追記終わり】

NHKの番組「ブラタモリ」が定期放送を終了することになりました。このことを惜しむとともに、長年の放送に感謝したいと思います。

NHKの人気番組でタレントのタモリさんが出演する「ブラタモリ」(土曜午後7時30分)のレギュラー放送が今年度末で終了する。NHKが14日、発表した。街歩きの達人であるタモリさんが全国各地や海外を訪ね歩き、その土地の自然や歴史などを伝える番組で、2008年に始まり、15年から通年のレギュラー番組となっていた。

朝日新聞デジタル

NHK「ブラタモリ」は、タレントのタモリさんが街を散策して土地の地理、歴史や自然にふれる番組。

2008年に番組が始まった当初は、当時タモリさんが司会を務めていたフジテレビ「笑っていいとも!」(2014年終了)の放送が毎週月〜金曜日の昼だったことから、遠方へのロケ撮影が難しいことを逆手に取って、東京周辺のニッチな地形や歴史を紹介する番組として人気を得ました。「笑っていいとも!」終了後の2015年からは、ロケ地を全国に拡大して、各地の風土を解説してきました。

ブラタモリは、長年にわたって地理、歴史、地学の各分野にまたがる教養・教育コンテンツを提供してくれました。その功績を改めて振り返ってみたいと思います。

①地理側面

まず、ブラタモリは各地の地理(自然地理、人文地理)を紹介する番組でした。扇状地などの地形、交通路の発達による都市の形成などをわかりやすくまとめ、番組にしてくれました。土曜日のゴールデンタイムに多くの視聴者を地理的コンテンツに届ける役割は大きく、2010 年には日本地理学会賞(団体貢献部門)を受賞しています。

学会賞:団体貢献部門 - 日本地理学会
日本地理学会賞(団体貢献部門)は,地理学の研究又は普及発展に関して顕著な功績のあった団体(会員・非会員)を対象

ブラタモリは、地理学の成果をエンターテイメントに昇華し、たくさんの人を惹きつけてくれました。このような番組はあまり例のないことです。

②地学的側面

ブラタモリは、地学的な切り口でも番組を構成していました。案内人が岩石を取り出して、タモリさんがその種類を答え、ナレーションの草彅さんが「さすがタモリさん」と言う一連の流れは様式美のようでもありましたが、これは地学・地質学の基本が実際の地形にも応用できることをよく示すものでした。他にも火山の成り立ちや地形の変化、プレートテクトニクスなど、さまざまな地学的要素が盛り込まれていました。

③郷土史的側面

最後に、ブラタモリは(特に全国版において)郷土史を取り上げる番組でもありました。タモリさんをわが街で案内することは、全国の郷土史研究家にとって夢であったといいます。日本史の時間に教わる全国的な通史とはまた違う、郷土に刻まれた歴史の面白さを視聴者に伝えてくれました。

タモリさんが訪れた場所には地震などの災害が起きるという俗説もありましたが、それだけブラタモリは全国各地を旅して回ったということだと思います。ブラタモリの放送回数は、全国版となった2015年以降だけで260回以上。それだけ全国の地理や風土を紹介してきたわけですから、たいした偉業です。これまで本当にありがとうございました。

残念なのは、ブラタモリにかわって一般の人々が地理や地学、郷土史に歴史を持ってもらえるようなテレビ番組が製作されなくなることです。民放も含めて、教養的イメージを保った紀行番組は減っています。地理、地学、郷土史は学校の入学試験に使わないか頻度が少ないことからあまりメジャーな学問分野ではありません。ブラタモリは不定期な特番として企画しているようですが、NHKはぜひこの種の番組を今後も続けていってほしいと思います。

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